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【特集】世界農業遺産「琵琶湖システム」
その魅力を追う-守り手の手Vol.5-
第5回おうちグルメキャンペーンの食材「セタシジミ」
「セタシジミ」は琵琶湖水系にしか生息していない固有種であり、家庭の味として古くから親しまれてきました。
今回は「セタシジミ」の魅力をより多くの人に知っていただくために、滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所の今井良平さんに取材させていただきました。
ぜひご覧ください。
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変わりゆく琵琶湖と歩調を合わせて
滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所
今井良平さん
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石山寺山門付近で見つかった石山貝塚からは、多くの貝殻などが出土している。近隣の粟津湖底遺跡と並んで日本最大級の淡水貝塚と言われている。セタシジミやコイ、フナなどの淡水生物のほか、サルやイノシシなどの動物の骨が出土しており、約7,000年近く前から、琵琶湖とその周辺の生態系は、人々の暮らしを豊かにしてきたことがうかがえる。
琵琶湖のほとりで代々続く漁師の家系に生まれた今井良平さん。父はセタシジミを中心に漁を行っており、禁漁期間である夏場はアユ漁に出ていた。幼少期は両親の仕事場が遊び場だった。小学校高学年から漁師の仕事を手伝い始め、高校に入ると船に乗り、漁師としての修行が始まった。
「夏になると沖すくい網でアユを獲っていました。日の出前に出港し、暗くなるまでアユの群れを探します。見つけたら群れを目指し、船の先端の網を入れてアユを獲ります。3m程の網には1回で50㎏ぐらいアユが獲れるんですが、それを船内の水槽まで運搬する作業だけでもとても大変でした。」
今井さんは、主に水深15ⅿまでの砂地に生息しているセタシジミを、貝びき網で獲っている。貝びき網漁業は重さ30㎏ほどのマングワと呼ばれる漁具で砂に潜っている貝類を獲る漁法だ。
貝びき網漁業には禁漁期が設定されるほか、漁業者は一定のサイズに達しない小型の貝を漁獲しないなどの取り組みを行い、持続的な方法で資源を利用してきた。しかし、漁獲量は減少している。1957年の6,097㌧をピークに、1969年には1/3の1,927㌧にまで減少した。これは、1961年に琵琶湖で初めて外来種の水草であるコカナダモが発見され、琵琶湖の生態系の変化が顕著になったことが一つの要因と考えられている。近年では年間の漁獲量は40~50㌧前後となっている。
「祖父の時代は、たくさん獲れたと聞いてます。まんべんなく減っているというより、漁場が10箇所あるとすると、うち5箇所では全く獲れなくなったという感じです。」
こういった状況に対し、漁業者による採捕自粛といった資源管理と合わせて、滋賀県では湖底の耕うんや砂地の造成による成育環境の改善、稚貝の放流などの対策を行ってきた。しかし、セタシジミを含め、琵琶湖の水産資源を取り巻く環境は、厳しい状況が続いている。
「琵琶湖には多くの魚種とそれらを獲る漁法があります。特定の魚種や漁法に偏らず、まんべんなく漁をすることも必要じゃないかと思います。禁漁期間の順守だけでなく、1日あたりの漁獲量に上限を設定するのも有効かもしれません。とにかく、今まで通りではない、新しい行動が必要です。」
今井さんは現在、3隻の漁船を漁法ごとに使い分け、貝びき網漁業のほか、刺網漁業、延縄漁業、引縄釣漁業を行っている。複数の漁法を実践している漁師は多くないという。
「アユの沖すくい漁は体力的にも過酷で、これからもずっと続けていくのは難しいと感じていました。何年か前、大規模な台風の影響でセタシジミが全く獲れない年がありました。またコロナ禍では、今までの常識がガラッと変わったと感じました。今まで通りではなく、新しいことにチャレンジしなければと思い、今まで経験がなかった漁法に挑戦しました。自分一人では、新しい漁法を覚えるのは難しかったですが、小さい頃から漁港で一緒に遊んだ幼馴染と、試行錯誤しながら覚えていきました。切磋琢磨するよきライバルであり、なんでも相談できる漁師仲間です。」
漁師は天職と語る今井さん。その面白みはどこにあるのか。
「自分で考えて行動したことが、結果として漁獲量に丸々出るんです。たくさん獲れるともちろん楽しいし、不漁でも、次に活かす糸口になる。最近は息子のバレーボールの試合を見に行ったり、休みの日を作ったりしています。ただ、365日、琵琶湖にいたいですね。」
琵琶湖を愛す今井さんに、琵琶湖の美味しさについて伺った。
「セタシジミはもちろん美味しいですね。シジミだけの味噌汁が一番美味しい。うちでは他の具材は入れません。湖魚であれば1月から2月にかけて獲れる寒鮒(カンブナ)の刺身ですね。生け簀で泥抜きすると臭みは一切ありません。脂がのっていてとても美味しいですよ。」
幼い頃から触れてきた伝統や慣習を大切にしながら、変わりゆく湖に歩調を合わせてき今井さん。ことさら難しく聞こえるが、長い歴史の中で、どの時代にも当たり前に築かれてきた「人と琵琶湖の関係」。その原点ではないだろうか。
【取材先】
滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所
今井 良平さん(ryopei0307)
【特集】世界農業遺産「琵琶湖システム」
その魅力を追う-守り手の手Vol.5-
第5回おうちグルメキャンペーンの食材「セタシジミ」
「セタシジミ」は琵琶湖水系にしか生息していない固有種であり、家庭の味として古くから親しまれてきました。
今回は「セタシジミ」の魅力をより多くの人に知っていただくために、滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所の今井良平さんに取材させていただきました。
ぜひご覧ください。
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変わりゆく琵琶湖と歩調を合わせて
滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所
今井良平さん
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石山寺山門付近で見つかった石山貝塚からは、多くの貝殻などが出土している。近隣の粟津湖底遺跡と並んで日本最大級の淡水貝塚と言われている。セタシジミやコイ、フナなどの淡水生物のほか、サルやイノシシなどの動物の骨が出土しており、約7,000年近く前から、琵琶湖とその周辺の生態系は、人々の暮らしを豊かにしてきたことがうかがえる。
琵琶湖のほとりで代々続く漁師の家系に生まれた今井良平さん。父はセタシジミを中心に漁を行っており、禁漁期間である夏場はアユ漁に出ていた。幼少期は両親の仕事場が遊び場だった。小学校高学年から漁師の仕事を手伝い始め、高校に入ると船に乗り、漁師としての修行が始まった。
「夏になると沖すくい網でアユを獲っていました。日の出前に出港し、暗くなるまでアユの群れを探します。見つけたら群れを目指し、船の先端の網を入れてアユを獲ります。3m程の網には1回で50㎏ぐらいアユが獲れるんですが、それを船内の水槽まで運搬する作業だけでもとても大変でした。」
今井さんは、主に水深15ⅿまでの砂地に生息しているセタシジミを、貝びき網で獲っている。貝びき網漁業は重さ30㎏ほどのマングワと呼ばれる漁具で砂に潜っている貝類を獲る漁法だ。
貝びき網漁業には禁漁期が設定されるほか、漁業者は一定のサイズに達しない小型の貝を漁獲しないなどの取り組みを行い、持続的な方法で資源を利用してきた。しかし、漁獲量は減少している。1957年の6,097㌧をピークに、1969年には1/3の1,927㌧にまで減少した。これは、1961年に琵琶湖で初めて外来種の水草であるコカナダモが発見され、琵琶湖の生態系の変化が顕著になったことが一つの要因と考えられている。近年では年間の漁獲量は40~50㌧前後となっている。
「祖父の時代は、たくさん獲れたと聞いてます。まんべんなく減っているというより、漁場が10箇所あるとすると、うち5箇所では全く獲れなくなったという感じです。」
こういった状況に対し、漁業者による採捕自粛といった資源管理と合わせて、滋賀県では湖底の耕うんや砂地の造成による成育環境の改善、稚貝の放流などの対策を行ってきた。しかし、セタシジミを含め、琵琶湖の水産資源を取り巻く環境は、厳しい状況が続いている。
「琵琶湖には多くの魚種とそれらを獲る漁法があります。特定の魚種や漁法に偏らず、まんべんなく漁をすることも必要じゃないかと思います。禁漁期間の順守だけでなく、1日あたりの漁獲量に上限を設定するのも有効かもしれません。とにかく、今まで通りではない、新しい行動が必要です。」
今井さんは現在、3隻の漁船を漁法ごとに使い分け、貝びき網漁業のほか、刺網漁業、延縄漁業、引縄釣漁業を行っている。複数の漁法を実践している漁師は多くないという。
「アユの沖すくい漁は体力的にも過酷で、これからもずっと続けていくのは難しいと感じていました。何年か前、大規模な台風の影響でセタシジミが全く獲れない年がありました。またコロナ禍では、今までの常識がガラッと変わったと感じました。今まで通りではなく、新しいことにチャレンジしなければと思い、今まで経験がなかった漁法に挑戦しました。自分一人では、新しい漁法を覚えるのは難しかったですが、小さい頃から漁港で一緒に遊んだ幼馴染と、試行錯誤しながら覚えていきました。切磋琢磨するよきライバルであり、なんでも相談できる漁師仲間です。」
漁師は天職と語る今井さん。その面白みはどこにあるのか。
「自分で考えて行動したことが、結果として漁獲量に丸々出るんです。たくさん獲れるともちろん楽しいし、不漁でも、次に活かす糸口になる。最近は息子のバレーボールの試合を見に行ったり、休みの日を作ったりしています。ただ、365日、琵琶湖にいたいですね。」
琵琶湖を愛す今井さんに、琵琶湖の美味しさについて伺った。
「セタシジミはもちろん美味しいですね。シジミだけの味噌汁が一番美味しい。うちでは他の具材は入れません。湖魚であれば1月から2月にかけて獲れる寒鮒(カンブナ)の刺身ですね。生け簀で泥抜きすると臭みは一切ありません。脂がのっていてとても美味しいですよ。」
幼い頃から触れてきた伝統や慣習を大切にしながら、変わりゆく湖に歩調を合わせてき今井さん。ことさら難しく聞こえるが、長い歴史の中で、どの時代にも当たり前に築かれてきた「人と琵琶湖の関係」。その原点ではないだろうか。
【取材先】
滋賀びわ湖漁業協同組合堅田支所
今井 良平さん(ryopei0307)
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('25/12/14 10:02 時点)