第288回 氷川風土記「大湯祭と海山の実り」

氷川神社の特殊神事「大湯祭」の本祭は12月10日に行われます。
本祭は午前8時に斎行致され、米、酒、百味膳(百取膳とも)、菱餅、海老、長芋、串付の大鮒を、通常より大きな尺三方で御祭神それぞれに計21台お供えします。

その中の「百味膳」という特殊な神饌は海川のもの八種、山野のもの八種で一膳とし、様々な神饌をすべて熟饌(調理した神饌)にして、本殿、摂末社あわせ百膳をお供えします。
潔斎した宮司や神職によって古式ゆかしく調理が執り行われ、神饌を直接目にすることはかないません。
これらの食材は、かつては氷川神社付近の山野や川で採れたものがお供えされていたそうです。

また、この日は特別に、御祭神の大己貴命(大国様)と少彦名命(恵毘須様)の御札である福神札や福熊手、福財布、そして福種銭を授与しております。
福種銭は「ふくたねせん」と読み、古くから民間で信仰された縁起物のひとつで、お賽銭の一部をお祓いした縁起の良いお金と替えて商売の元金(種銭)とするものです。
手元に置いておくものではなく使うもので、このお金を使う=世の中に種をまくと、巡り巡って大きな福が自分に還ってくるとされます。
種銭は昔、文字通り種籾を用いたそうです。

その年に採れたお米を御神前に備えて豊作の感謝をし、神社で豊作祈願をした種籾をいただき、翌年種籾を蒔いて、また神社にお米を御神前にお供えしてきたものが、時代を経て現在の福種銭になりました。
百味膳やお供え物からは地域の実りを神様にお供えし感謝する心が見えますし、福種銭からは神様からの福を独り占めするのではなく、皆で福を分かち合う心が伝わってきます。

この日は本祭にあわせて酉の市がたちます。

これを「十日市(とおかまち)」ともいい、境内や参道に熊手や様々な露店が立ち並びます。
大湯祭は大宮の冬の風物詩。
ぜひお越しください。

〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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